研究概要 |
Bi_20_3に2価(Ca^<2+>,Sr^<2+>,Ba^<2+>),3価(Y^<3+>,Gd^<3+>)および5価(Nb^<5+>,Ta6+)のイオンを添加してホタル石型構造を基本とした構造をもつ固溶体を調製し,20Hzから1MHzの周波数領域で誘電率を測定した.その結果,いずれの試料においても100〜400℃の温度領域でElectric modulusの複素成分M"の周波数依存性にイオン伝導の援和を示唆するピークが観測された.M"のピークは昇温と共に高周波側にシフトし,緩和周波数の温度依存性はアレニウス型を示した.活性化エネルギーは,2価,3価および5価を添加した試料でそれぞれ特徴的な組成依存性を示した.これはそれぞれの価数のイオンを添加したときの固溶体が特徴的な局所横造をとることによると考えられる.2価および3価のイオンを添加した試料では,活性化エネルギーの組成依存性はそれぞれの固溶体の間で類似した傾向を示し,また高温での電気伝導率から求めた値に近いものであった.これらの固溶体では高温から冷却してゆくと,イオン伝導機構に変化がないままジャンプ頻度が低下し,交流電場の周波数に匹敵するところで援和が起こるものと考えられた.これに対して,5価のイオンを添加した場合にはNb^<5+>とTa^<5+>で緩和周波数の活性化エネルギーの組成依存性は異なっており,高温におけるイオン伝導率の活性化エネルギーとも異なっていた.5価のイオンを添加した試料では,インコメンシュレートな変調構造をとることが知られており,このような微妙な構造の組成依存性が可動イオンの緩和の機構に大きく関与することがわかった.
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