研究概要 |
この研究では、申請者らが開発した超音波表面処理(Ultrasonic Surface Treatment、UST)によりガラス表面に非線形光学(NLO)結晶膜を結晶化させ、その配向性を制御することを試みた。また、そのメカニズムを解明し、配向の制御方法を確立することを行った。 超音波処理(UST)手法は,目的結晶粒を含む懸濁液中に鏡面研磨したガラスを浸漬し,超音波洗浄器により,超音波を所定時間照射した後,熱処理を行うものである。UST処理によって,表面結晶層の配向制御が可能であった。例えば,USTを行わない場合,Ba_2TiSi_2O_8表面結晶は無配向である。一方,UST処理を行った場合,結晶層は完全にc軸配向し,配向結晶層をSEMで確認することができた。また,熱処理昇温速度が大きいほど,配向しやすい傾向があった。 配向の原因としては,様々な方向への結晶成長が競争的に起こった結果と考えられる。すなわち,UST処理によって,多数の核が形成され,それらの核は成長速度の早い方向に成長する。その間に,成長速度の遅い方向成分が成長する機会がなくなり,その結果,表面結晶は成長速度の早い方向へ配向するものと考えられる。 また,UST処理によって配向性を変えることが可能である。たとえば,Li_2Si_2O_5の表面結晶化において,UST処理を行わない場合はc軸配向であるが,UST処理を行うと,b軸配向に変化する。これは微粒子のガラス表面への打ち込みと表面水和層の影響によるものと考えられる。 USTによりガラスの表面結晶化を制御した配向性のよい透明かつ緻密な種々のNLO結晶薄膜(例えば,BBO,LiNbO_3,(Ba,Sr)_2Ti(Si,Ge)_2O_8,など)を作製した。それらの膜のNLO特性を評価した結果,大きな二次非線形光学感受率を有する膜ができた。
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