研究概要 |
本研究課題では、既知または未知の酸化物系セラミックス固溶体の相分離についての知見を得ることを目的とした。既知の系としては、詳細な検討が行われていないLiFe_5O_8-LiAl_5O_8系に着目し、その相分離挙動と磁気的特性の変化について検討を行った。固相法により1250℃で焼成して得られたLi(Fe,Al)_5O_8単相固溶体をCook and Hilliardの理論に基づいて計算した化学スピノ-ダル線の内外の領域でアニーリングし、その相分離挙動の検討を行った。化学スピノ-ダル線内の1000℃でアニーリングしたLi(Fe_<0.5>Al_<0.5>)_5O_8のX線回折ピークの両側には、アニーリングの進行とともにサイドバンドが生じ、その位置と強度は変化した。生成したAlリッチ相とFeリッチ相の2相の固溶体の格子定数は、アニーリングとともにスピノ-ダル分解に特有な連続的な変化を示した。一方、化学スピノ-ダル線外の1000℃でアニーリングしたLi(Fe_<0.68>Al_<0.32>)_5O_8では、誘導期間200hでAlリッチ相の析出が見られたが、それ以後のXRDピークの位置の変化は見られず、核生成-成長型の相分離をした。磁気的特性では、1000℃で200hアニーリングし、スピノ-ダル分解させたLi(Fe_<0.5>Al_<0.5>)_5O_8の保持力が相分離前の約10倍に増加する事が明らかとなった。核生成-成長型の相分離では、保持力の変化は見られなかった。この保持力の増加は、スピノ-ダル分解により生じていると考えられる、非磁性相(Alリッチ相)と磁性相(Feリッチ相)がナノメーターレベルで交互に現れる変調構造によるものであると考えられる。すなわち、Feリッチ相がAlリッチ相によって囲まれ磁壁がピン止めされるためであると考えられる。この考察は、TEMによる微構造観察で確認する予定である。また、ゾル-ゲル法によるプロセッシングの検討も併せて着手中である。 固相法による新規スピノ-ダル分解系の探索も各種複酸化物で検討中であるが、新たな知見は得られていない。
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