研究概要 |
【研究の目的】 電子計算機の演算処理の高速化や情報処理量の肥大化により,小型で大記録容量を有する磁気抵抗効果ヘッドを用いる磁気記録方式に対する関心が高まっている.磁気抵抗効果ヘッドは,金属や合金および化合物の各種薄膜が多層に積層された構造を有しており,積層膜の断面部分が記録媒体に近接することで記録媒体の磁化方向の変化を検出して磁気記録の再生を行う.しかし,各種の薄膜層が直接接触するために電気化学的な異種金属接触対(ガルバニック対)を作ることや,金属層や合金層が薄膜であるためにバルク材料とは異なる薄膜特有の電気化学的挙動をすることなどが予想されるが,これらについての研究報告はほとんどない,本研究では,磁気抵抗効果ヘッド用合金多層薄膜素子の腐食機構を浸漬腐食試験や電気化学的手法を用いて検討し,その防食方法の指針を得ることを目的とする. 【研究実施計画および実施結果】 (1)試料の作製 所有するイオンビームスパッタ蒸着装置を用いて,Au, Fe-Mn, Ni-Fe, Ta, Ni-Fe-Crの薄膜層を組み合わせて,磁気抵抗効果ヘッドの構造を有する多層薄膜試料,断面構造を模擬した試料,および単層薄膜試料を作製した. (2)浸漬腐食試験による腐食形態の観察. 各種の試料を用いてNaClおよびNa_2SO_4溶液中で浸漬腐食試験を行い腐食部位や腐食形態を観察した.その結果,ヘッドを構成するFe-Mn層がもっとも腐食を受けやすいことが分かった. (3)各薄膜層の電気化学的挙動の検討および腐食機構の検討 アノードおよびカソード分極曲線を測定し,各薄膜層の電気化学的挙動について検討した.また,2種の単層薄膜試料をゼロシャント電流計を介して溶液中でカップリングさせ,カップリング電流ならびに腐食の進行にともなう電位の変化を測定した.その結果,磁気抵抗効果ヘッドではFe-Mn層をアノードとする異種金属接触腐食が生ずることが分かった.
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