本研究では、最近、建築材料としても利用されてきているステンレス鋼の、大気腐食に影響を及ぼす主要因子の一つである海塩粒子量を種々の方法で測定し、ステンレス鋼の大気腐食との関連について検討した。 まず、海塩粒子については、沖縄県内において、JISに規定されているガ-ゼ法による測定値と暴露した試験板に付着している海塩を直接脱脂綿で拭うことで測定する試験板付着法で比較した。ガ-ゼ法により測定した結果、海岸からの距離が近い程、塩分量は約1mdd前後と多く、海岸から離れるにつれて少なくなり、約0.5mdd程度となり、季節による変動も小さくなる傾向にあった。一方、試験板付着法では、降雨による洗浄作用があるため、雨に濡れない箇所では時間とともに増加する傾向にあった。通常、ガ-ゼ法では雨に濡れない箇所に1カ月間または一定期間設置されるため、飛来塩分の累積、すなわち測定期間の積分値に相当する。従って、ガ-ゼ法と試験板付着法ガ-ゼ法による値が約10倍程度大きくなる場合もある。また、毎日の試験板付着法による値の30日間の和とガ-ゼ法による30日間の値を比較すると、ガ-ゼ法の値が大きくなった。微量な重量変化を測定できる水晶微量天秤法(Quartz Crystal Microbalance:QCM)を用いて飛来海塩粒子量の実時間測定に応用した結果、試験板付着法とよい相関関係にあった。 ステンレス鋼の耐候性に及ぼす雨の洗浄作用の効果を検討した結果、雨に濡れる場所よりは、雨に濡れにくい場所の方が短期間で腐食が急速に進行した。この場合、ガ-ゼ法の値はほぼ同程度であった。従って、実際の鋼板上では雨による洗浄作用等もあるため、ガ-ゼ法よりは試験板付着法の方がステンレス鋼の耐候性をうまく評価できるものと考えられた。
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