研究概要 |
高分子鎖を高度に配向させることは非常に有用であるため、高配向化の試みは超延伸法など、いくつかなされている。その中でも、自発的に配向する性質を持つ上、芳香環を骨格に有するので、高強度、高融点などの機能を比較的容易に発現させることが可能なため、最近液晶性高分子が注目されている。これらの液晶性高分子は電場や磁場等の外場により配向することが知られており、これら外場により配向させた試料の物性は延伸試料と異なることが昨年までに分かっている。そこで、本年度は液晶高分子の外場による配向挙動について代表的なサーモトロピック液晶であるエチレンテレフタレ-(ET)とp-ヒドロキシ安息香酸(PHB)の共重合体を用いて研究を行った。磁場中における配向挙動の実時間観察は非常に難しく装置も大掛かりになるので、本年度は電場による配向挙動について考察を行った。 試料はET40mol%,PHB60mol%のランダム共重合体(RODRUN LC-3000ユニチカ製)を用いた。この試料を光が透過する程度に薄くし、自作透過光強度測定用セルに挿入した。ホットステージ中でこの試料が液晶となる温度に保ち、電場への応答をその透過光強度から観察した。 電場への応答からこの液晶試料は緩和過程が存在することが分かった。電場を印可し配向させた後に電場を取り外しその緩和過程を検討したところ緩和の成分が2成分であることがわかった。また、電場強度の強さに比例して緩和時間の短い成分が増加した。つまり、分子内のメソゲンとスペーサーとで緩和時間が異なるというよりのではなく、緩和時間の異なるドメインが存在することが示唆された。また、偏向顕微鏡による観察から電場印可中にウィリアムズドメインに特徴的な縞状の模様と渦流の円運動が観察された。
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