これまでの金属シリコンからの脱リンに関する報告は、電子ビーム溶解、真空処理など、何れもリンの蒸気圧が比較的高い事を利用して真空脱カスを試みたものが多いが、これらの手法はスケールアップによる反応の疎外が予想されるなど、検討すべき課題が多い。一方、フラックスのよる清浄化処理においては比較的精練温度が高いこと、系の酸素分圧が低いことなどから、還元精練による脱リンの可能性がある。 申請研究は、酸化物糸フラックスと溶融シリコン合金間のリンの分配に関する平衡論的研究により溶融シリコンからのリンの還元除去反応の進行が確認された、との実験事実を踏まえて、より還元反応の進行を促進する条件として高塩基度フラックス、すなわち、カルシウムフロライド・カ-バイド系フラックスによる脱リン挙動を調査することを目的とした。 カルシウム-シリコン合金と酸化物系あるいはフロライト系フラックスを黒鉛坩堝内で溶解し、合金とフラックスの反応後、目的とする系のフラックスとシリコン合金とを平衡させる実験を試みたが、黒鉛坩堝との反応が著しく実験温度でフラックスや合金が固化する現象が認められた。フッ化物を多く含有するフラックスに対しては酸化物系坩堝の耐蝕性が疑問視されることは従来より知られているところであり、黒鉛坩堝が最適と判断していたが、実験手法上の問題点としての坩堝材の選択は解決に至らなかった。 また、申請研究では発展的課題として、粗金属シリコンを出発材料とした同系フラックスによる還元脱リンとそれに引き続く酸素添加によるカルシウム除去の試験をるつぼスケールで実施することを目的とした実験を予定していたが、上述の理由により実施が困難と判断された。
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