研究概要 |
粉体の乾式ハンドリングに於ける静電気発生機構の解明が,現在なお,重要な研究課題であることは論を侯たない。報告者はこれまでの研究で,空気中で生じるような粒子の衝突帯電現象では,接触面分離過程に於ける電荷緩和が最終的な衝突帯電量を決定しているとする,全く新しい帯電モデルに至った。この直接的な検証として,分離過程での放電に伴う放電発光を直接捉える方法があり得る。本研究では,この,剥離放電発光の直接計測を目指し,これを通じて,接触帯電量決定機構としての「放電緩和モデル」の検証を行うことをその主要な目的とした。既往の研究では,直径3mm程度の球形高分子粒子をモデル物質とする衝突帯電実験を通じて,絶縁性粒子状物質と金属板との衝突帯電に関する研究を行ってきた。本研究では,新たに,フォトマルチプライアを組み込んだ新しい衝突帯電実験装置を作成して粒子-金属板の衝突帯実験を行い,この際に,衝突-分離時に発生すると考えられる,放電緩和に伴う「剥離放電発光」を,フォトマルチプライアによって直接計測することを試みた。フォトマルチプライアからの出力は,ブリアンプを介してストレイジオシロスコープで観測した。安定したトリガが得られなかったので,衝突ターゲットにピエゾ素子を組み込んで粒子の衝突をモニタリングし,この信号をトリガとして粒子の衝突前後の信号を観測した。現在までのところ,フォトマルチプライアから,発光に伴うと考えられるような信号は得られていない。フォトマルチプライアの感度の向上や出力の増幅率の向上,及びとりわけ,SN比の改善が必要であると考えられ,今後更に検討を進める予定である。
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