細胞膜のタンパク質は、脂質が共存するため直接カラム法による分離・精製が容易でなく、さらに精製のために共存する細胞膜のリン脂質を除去するとその機能を失ってしまったりする。そこで、細胞膜から直接タンパク質を安定な相へ抽出するなど、細胞膜のタンパク質を効率よく分離・精製する方法の開発が望まれている。本研究は、細胞膜のタンパク質を連続的に抽出できる界面活性作用を持つ担体の開発と担体のタンパク質分離プロセスへの応用を目的とした。本年度は平成7年度奨励研究で行った界面活性基を有する開始剤と粒子とを反応させる方法では、合成した粒子の安定性に問題が生じたことから、グリシジルメタクリレートをモノマーとして用いてエポキシ基を有する粒子(以下GMA粒子と略す)を作製し、ついで粒子中のエポキシ基と種々の化合物とを反応させることにより、界面活性基を有する微粒子担体を合成した。成果の概要を以下に示す。GMA粒子に対して高い反応性を有する化合物をスクリーニングした結果、グアニジン塩類が35〜40%の導入率で粒子中のエポキシ基と反応することがわかった。粒子に界面活性作用を持たせるために、GMA粒子とグアニジン塩との反応で合成したグアニジン粒子と塩化ステアロイルとを反応させたところ、粒子のグアニジノ基1モルに対して3モルの塩化ステアロイルが反応することがわかった。GMA粒子と塩化ステアロイルを直接反応させるとエポキシ基に対するステアロイル基の導入率は75%であるのに対し、GMA粒子からグアニジン粒子を作製し、これに塩化ステアロイルを反応させるとGMA粒子中のエポキシ基を基準にしたステアロイル基の導入率は最低でも約105%となり、高い導入率で高級脂肪酸残基を粒子に導入できることがわかった。現在、界面活性基を導入した粒子を用いて、粒子に対するタンパク質の吸着量および吸着速度の測定を行っている。
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