オレフィン、一酸化炭素、アンモニアからアミド及びニトリルを合成することを目的として、オレフィンの中で最も基本的な分子であるエチレンを用い、常圧下で反応を行った。各種の金属アンミン錯イオンをシリカに担持した触媒を調製し、本反応に活性を示す金属種の探索を行った。触媒活性の序列は、Ru≫Rh≫Pt>Pdであり、Cu及びCoは活性がないことが分かった。各種Ru前駆体をシリカに担持して触媒活性を調べた結果、[Ru(NH_3)_5N_2]^<2+>または[Ru(NH_3)_6]^<3+>をイオン交換法により担持した触媒が最も高活性であり、Ru_3(CO)_<12>やRu(acac)_3を含浸担持した触媒の活性は前者の1/3程度、RuCl_3を担持した触媒は全く活性を示さないことが分かった。 [Ru(NH_3)_5N_2]^<2+>を前駆体として担体の影響を検討した結果、Y型ゼオライトに担持した触媒は活性が高く、プロピオンアミド及びニトリルの合計の生成速度はシリカ担持触媒に比べ2.6倍となった。シリカ担持触媒ではアミドとニトリルがほぼ等量生成するが、固体酸であるY型ゼオライトやシリカ・アルミナに担持した触媒では高選択的にプロピオノニトリルが生成した。末担持のシリカ・アルミナをシリカ担持Ru触媒の下流に充填し反応を行った。その結果、プロピオノニトリルはRu上で生成したアミドが担体上で逐次的に脱水することにより生成することが分かった。 担持Ruの触媒活性の前処理、反応温度依存性及び担持Ru触媒昇温脱離測定等を検討した結果、プロピオンアミド及びニトリルを与える活性種は、金属Ruではなく、Ruアンミン錯体のアンミン配位子と原料の一成分である一酸化炭素が部分的に交換した錯体であることが示唆された。ゼオライト担持触媒が高活性を示したのは、この活性種がゼオライト細孔内にイオン交換サイトに安定に保持されるためだと考えられる。
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