研究概要 |
酵素反応を局所化することによる1分子DNAの切断操作はすでに実現している紫外線レーザーに代わるものとなることが期待され、同時に、この方法により得られた切断断片を対象としたリンカーDNAとの連結反応、PCR増幅と組み合わせることによりゲノムDNA解析の簡素化が期待される。 本研究はレーザーによる局所温度制御を用いて酵素反応の局所化を実現することを目的としている。そのために、まず、赤外線吸収ガラス上で酵母染色体DNAをアガロースゲルに固定し、0℃付近まで冷却した。そのゲル中に制限酵素EcoRIおよびその反応バッファーを拡散させ、蛍光観察した結果、制限酵素によるDNAの切断反応は完全に抑制されていることが確認された。この試料にYAGレーザー(波長:1064nm,出力100mW)を照射したところ、レーザースポロット近傍のみの温度が酵素反応至適温度まで上昇し、その領域のみでDNAの切断が生じていることが確認された。今後、酵母染色体DNAより短いT4 DNAなどを用いて、レーザー出力と酵素反応活性化領域との相関を調べる予定である。 また、この手法で調製されたDNA断片をPCR法により増幅するためには既知配列を持つリンカーDNAと連結を行う必要がある。しかし、酵素反応が活性化するバッファーが蛍光観察を阻害するために顕微鏡視野内でDNA連結反応を活性化することは困難であった。そこで、観察と連結酵素反応の活性化が両立する条件を調べた結果、DNA標識蛍光としてはYOYOを用い、反応バッファー中のマグネシウムイオン濃度を2mMまで低下させると、両立が可能であることが明らかになった。現在のところ、顕微鏡視野内におけるDNA連結反応は確認されていないが、今後、進めていく予定である。
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