研究概要 |
エネルギー・極角同時検出可能な180°偏向型トロイダルアナライザーを用いた高角度分解光電子回折測定装置の測定・解析システムの構築とそれを用いた成長薄膜の光電子回折測定を行った。 当初は、購入したワークステーションをそのまま測定用システムとして用いる予定であったが、2次元検出器の信号を読み出すポジションコンピューターの読出速度が遅く、単純に測定用のシステムとした場合にはこの読み出しのタイミングを待つために、ワークステーションの性能を十分活かせないことがわかった。そこで、ワークステーションを学内LANに接続し、従来の測定用コンピューターから逐次学内LANを通じて測定データを転送し、ワークステーション上で解析を行うシステムを構築した。このため、ワークステーション自身の負荷を軽減でき、測定データの解析と理論計算に加え、電子アナライザーの軌道計算の最適化も同時に行えるようになった。また並列化により他の光電子回折測定装置からの測定データについても同様な処理が可能になった。 これを用いて、電子アナライザーの軌道計算の最適化を行い、トロイダルアナライザーの入射レンズ系の電位の理論的最適条件を見出した。この条件を基に測定条件の最適化を行った結果、エネルギー分解能0.11eV、角度分解能1°のエネルギー・極角同時測定が可能となり、MgO(001)単結晶表面のOKLLオージェ電子回折の2次元パターン測定を行った。さらに球面波多重散乱理論計算プログラムを開発し、他の測定装置で測定したCaO/CaF_2(111),CaF_2/S/InP(100),SrF_2/Ge(111)等の薄膜系の解析と理論計算を行い、これらの薄膜の構造を明らかにした。以上の研究を通じ、学内LANを利用した高角度分解光電子回折の測定、解析、理論計算、軌道計算のオンライン化を実現し、光電子回折の測定・解析の効率化を達成した。
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