研究概要 |
8種の金属置換テトラパラヒドロキシフェニルポルフィリン(M・T(p-OH)PP)を合成し,0.1MNaOH中,ITO電極上で酸化的に重合することにより,薄膜を作製した。 サイクリックボルタモグラム測定から,掃引電位範囲(-0.4V〜0.9V(vs.Ag/AgCl))で二価の状態のみをとる金属(Zn,Mg,Cu)ポルフィリンは,最初の掃引において明確な2つの酸化波(酸化電位の低い物からOx1,Ox2とする)が認められ,Ox2の電位は中心金属の影響をほとんど受けず0.77Vとほぼ一定値をとること,Ox2の電流量がOx1の約4倍であること,中心金属の電気陰性度が高くなるとOx1は正の方にシフトすることなどから,Ox1はポルフィリン環部分の酸化,Ox2は側鎖のヒドロキシフェニル部分の酸化に由来すると推定された。また,重合が進行するに従って,電極表面は不活性化された。 一方、中心金属の原子価が掃引電位範囲で三価の状態を取り得る金属(Fe,Co,Ni)ポルフィリンは重合膜の形成にともなって0.9Vにおける電流量の増加が認められ,OH^-の酸化反応を触媒することが明らかとなった。これは,OH^-が膜内を自由に拡散し得ること,三価の状態がOH^-を軸配位子として取り得ることによると考えられる。また,Niポルフィリンは二価と三価の状態で吸収スペクトルに差が認められ表示材料としての応用が期待される。 膜の構造についてもFT-IR法により検討したところ,モノマー状態に近いスペクトルが得られ,側鎖のフェニル基間において重合が形成されていることが示唆された。
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