研究概要 |
最近、水の光還元反応の光触媒としてπの共役高分子を利用する研究が行われている。本研究では、n型π共役高分子ポリビピリジン類の光触媒機能をベンゼンからフェノールへの一段酸化合成に利用した。これまで、フェノール一段酸化合成反応の光触媒として、酸化チタン等の無機半導体を用いた研究は多く行われているが、π共役高分子等の有機高分子半導体を用いた例はあまり多くない。光触媒として用いたポリピリジン類及びポリビピリジン類としては、ピリジンユニットの6位にメチル基、ヘキシル基を有するポリアルキルピリジンP6MePy、P6HexPyおよびビピリジンユニットの6,6′位にメチル基、ヘキシル基を有するポリアルキルビピリジンP6MeBpy、P6HexBpyである。これらのポリマーは、いずれも有機金属触媒反応を用いた脱ハロゲン化重縮合法により合成した。光酸化反応は、石英製セルにCH_3CN(1.2mL),C_6H_6(0.5mL),Cu(BF_4)_2(20μmol),H_2SO_4(10μmol),H_2O(10μL),ポリマー(1.6mg)を添加後、酸素雰囲気下で光照射(λ>290nm)した。3時間の光照射において生成するフェノール収量は、P6HexBPY(PhOH=60μmol),P6HexPy(35μmol),P6MeBpy(43μmol),P6MePy(28μmol)であった。ポリビピリジン型P6HexBpyとP6MeBpyは、対応するポリピリジン類と比較して高い触媒活性を示した。また、本光酸化反応は酸素下で行う必要はなく、空気下においてもほぼ同様の収量でフェノールが得られた。また、ベンゼンのかわりにトルエンを用いた場合は、ベンズアルデヒドが主生成物として選択的に生成することもわかった。
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