研究概要 |
本研究では、放射線化学反応で生成した分離型ラジカルカチオンによる反応性を調べ、分離型ラジカルカチオンによる反応制御を試みた。我々は、1,2-芳香族置換シクロブタン化合物のラジカルカチオンでは、シクロブタン環の1,2-炭素-炭素結合の均一開裂によって、1位にラジカルが4位にカチオンが分離した分離型1,4-ラジカルカチオンが生成することを見出した。この分離型1,4-ラジカルカチオンの生成過程、生成した分離型1,4-ラジカルカチオンの単分子的反応や反応基質との二分子反応を調べ、フリーラジカルやフリーカチオンとの反応性の差異、通常の非分離型ラジカルカチオンの反応性との差異などを明らかにした。具体的には、パルスラジオリシス法による過渡吸収スペクトルの測定および、低温マトリックス法による吸収スペクトル測定によって、研究を行った。1,2-ジアニシルシクロブタン、1-アニシル-2-フェニルシクロブタンなどの1,2-芳香族置換シクロアルカン化合物の1,2-ジクロロエタン溶液の放射線化学反応によってそれらのラジカルカチオンを生成し、これからシクロブタン環の1,2-炭素-炭素結合の均一開裂による分離型1,n-ラジカルカチオンの生成過程における環のサイズや置換基の種類の影響、分離型1,n-ラジカルカチオンのラジカル位とカチオン位との相互作用などを調べた。次に、生成した分離型1,n-ラジカルカチオンの単分子的開裂反応や、酸素分子とのラジカル位との二分子反応速度やメタノールなどの求核試薬との二分子反応速度を調べ分離型1,n-ラジカルカチオンの生成と反応性について明らかにした。その結果、分離型ラジカルカチオンによる反応制御について検討した。
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