研究概要 |
ガラスはそのガラス転移温度以下で原子および分子の運動が凍結された固体であると考えられ、応力を加えると粘性流動や永久歪みは発生せず、そのまま破壊にいたると考えられてきた。本研究において、ガラスファイバーを湾曲させることによってガラス転移温度よりはるかに低い温度での微小な歪量を読み取り、粘性および緩和過程を解析することができた。さらに、硬度を測定し熱処理にともなう変化と緩和過程について解析した。 鉛ケイ酸塩ガラスおよびソーダ石灰ガラスを用いてガラス転移温度以下における粘性と硬度の測定を行った。粘性測定においてガラスファイバーとして線引きしたばかりのものとガラス転移温度以下の温度で種々の時間予備熱処理したファイバーを用いた。各々のファイバーのガラス転移温度以下における粘性を測定したところ、予備熱処理温度および時間が増加するにつれて各々のガラスのガラス転移温度以上の粘度を最適化することによって得られたFulcher粘性曲線(logη=A+B/(T-To)、η:粘度、A,B,To:定数)にガラス転移温度以下で近づくことがわかった。さらに、非線形緩和過程を表すKWW式(1-ψ=exp[-(t/γ)^n]、γ:平均緩和時間、n:緩和時間を分布を表す係数)を用いて解析を行った結果、予備熱処理温度および時間の増加につれて緩和時間の分布が狭くなる傾向が示された。しかしながら、ガラス転移温度以下でも単一緩和時間で表すことができなかった。また、ここで求められた緩和時間の活性化エネルギーはガラス転移温度に近づくにつれて大きくなり、ガラス転移温度に外挿すると粘性の活性化エネルギーに等しくなった。粘度を求めた同じガラスの室温からガラス転移温度付近までの硬度を測定した。ガラスの硬度は温度上昇にともない直線的に変化しており、明確な変化は見られなかった。しかしながら、さらなる熱処理による形状の回復と緩和およびガラス内部への流動による密度変化を関係付けることができた。
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