研究概要 |
0.5mol/dm^3のCa(NO_3)_2水溶液とMg(NO_3)_2水溶液とを決めた配合比に混合した溶液200mlを沈殿反応温度に加温し、それに4.0mol/dm^3H_3PO_4水溶液200mlと所定濃度(4.0-7.0mol/dm^3)に調製したKOH水溶液200mlとを混合した溶液を加えて、沈殿反応させて(反応温度:40〜95℃)えられた沈殿懸濁液を所定時間かくはん保持した。その結果、沈殿物の組成はおもに懸濁液のpHに依存した。ウィットロッカイトは、95℃の条件ではpH7.8の弱アルカリ性からpH5.8の弱酸性の領域で生成したが、合成温度の低下とともにその領域は狭くなり、40℃の条件ではpH7.2のほぼ中性領域で生成した。ウィットロッカイトが生成したpH領域よりも高pH領域では水酸アパタイトが生成し、逆にそれよりも低pH領域ではCaHPO_4、CaHPO_4・2H_2Oなどが生成した。さらにCa(NO_3)_2が水溶液とMg(NO_3)_2水溶液との配合は主にZ=Mg/CCa+Mg)が0.1で生成したが、合成温度の低下とともにその領域はひろくなり、0.1〜0.2でも生成した。このような湿式合成でえられたウィットロッカイトの化学組成はおもにCa_<16.5>K_<0.5>Mg_2H_<4.5>(PO_4)_<14>・6H_2Oと表すことができ、化学量論組成のCa_<18Mg2>H_2(PO_4)_<14>に比べると、湿式合成したウィットロッカイトにはカルシウムイオンの欠損とその欠損によるカリウムイオン及び水素イオンの置換がみとめられ、さらに含水和物であることもわかった。カルシウムの欠損性は低温度で合成するほど高まった。結晶水は加熱による格子定数の変化からc軸の著しい収縮が認められたことから、c軸上にあることが想定できた。また、CaをSrにかえたMg含有ストロンチウムウィットロッカイトも同様な実験条件で合成でき、さらに構造中のMgの代わりにFe,Co,Ni,Mnをもちいてもウィットロッカイト構造を有するリン酸塩を合成できることがわかった。 以上のように、湿式法によるウィットロッカイト構造を有するアルカリ土類リン酸塩の合成条件を明らかにするとともに、その組成についても詳細に検討した。
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