1.リチウムシラエノラートをアシルポリシランとシリルリチウムとの反応から効率良く生成する方法を確立した。同時に本法の適用範囲も解明し、アシルポリシランのカルボニル置換基はフェニル基よりも大きくかつα水素を持たないことがリチウムシラエノラートを安定に収率よく得るために必須であることを報告した。また生成したリチウムシラノエラートの構造をNMRを中心とするスペクトル解析で明らかにし、中心のケイ素と炭素の結合は幾分二重結合性を有していることが見いだされた。さらに、リチウムシラノエラートの化学的性質を解明する目的でハロゲン化アルキル、クロロシラン、ジエン、カルボニル化合物、塩化パラジウムとの反応を詳細に検討し、これらの反応がリチウムシラノエラートのカルボニル上の置換基の種類によって大きく左右さること、リチウムシラノエラートが炭素等価体であるリチウムエノラートとは異なる反応性を示すこと、リチウムシラノエラートが様々なアシルポリシラン、シレン、ケイ素環状化合物の合成前駆体として有用であることが明らかになった。 2.アシルポリシランの熱異性化反応からシレンを定量的に、しかも簡便に生成する手法を開発した。この手法を用いて生成されたシレンとオレフィン、ジエン、アセチレン、カルボニル化合物との反応を検討した。その結果これらの反応経路がシレン上および反応剤の反応中心上の置換基の種類、とくにアルキル基かアリール基かによって大きく左右されることが見いだされた。これらの反応も各種ケイ素環状化合物の合成に有用である。
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