研究概要 |
2-ブチン-1,4-ジオールとイソシアネートから合成したビスカルバミン酸エステルをパラジウム0価触媒及び塩基と反応させると一方のカルバミン酸エステルの窒素原子が分子内求核付加反応を行い、もう一方のカルバミン酸エステルが脱離反応を行うことでアレン化合物(4-エテニリデン-2-オキサゾリジノン)を収率良く与える新反応を見出した。本反応は窒素原子上の置換基がスルホニル基やアシル基等の電子吸引性の場合に速やかに進行した。アリール基やアルキル基の時には、全く反応しなかった。 4-エテニリデン-2-オキサゾリジノンは様々なオレフィンやアセチレン化合物と加熱条件下で容易に環化付加反応を起こした。80℃の加熱条件下でアクロレインやメチルビニルケトンと反応させるとアレンの内部の二重結合と[4+2]の環化付加反応を行いジヒドロピラン誘導体を与えた。ところが、アクリル酸メチルを用いるとアレンの末端の二重結合と[2+2]の環化付加反応を行いシクロブタン誘導体を選択的に与えた。スチレンd-8と反応すると同様な[2+2]の環化付加反応が進行し、しかも1種類の生成物を与えた。つまり[2+2]の環化付加反応が位置及び立体選択的に進行していることが明らかになった。CACheシステムによるMOPACAM1で何故このような選択性が生じたのかを考察してみたが現在までのところ実験結果を示唆する計算結果を得ることができなかった。今後は詳細な遷移状態や中間体を考慮に入れたab initio計算法による検討が必要だと思われる。また本研究ではさらに興味深い新反応を開発した。ビニルエーテルと4-エテニリデン-2-オキサゾリジノンを加熱条件下で反応させると窒素原子上の置換基のトシル基がアレンの中心炭素に1,3-転位反応し、中間体として生じたアザブタジェン骨格にビニルエーテルが環化付加反応したと思われるビニルスルホニル化合物を収率良く与えることができたのである。しかしながら本反応の反応機構は全く明らかになっておらず、今後の研究の発展に期待される。以上のように本研究によってアレンの新規合成法と特異な反応挙動について興味ある知見を得ることができた。
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