研究概要 |
アンチモン(V)テトラフェニルポリフィリンにおいて、軸配位水酸基に対してトランス位(反対側)の他の軸配位子(例、-OMe,-OEt,-OCH_2CF_3)をそれぞれ導入した軸非対称型のアンチモン(V)ポルフィリン錯体の簡便な合成に成功している。 本研究においては、さらに導入しる軸配位子の種類を拡張し、軸配位子としてフェノキサイド(-OPh)が同様の手法で導入できることを見いだした。このようなπ電子計を有する軸配位子はポルフィリンπ電子計との相互作用が期待され、新たなポルフィリン錯体の物性の発現が予想される。今回、軸配位子として、フェノキサイドとメタージメチルアミノフェノキサイドを持つ新規非対称型アンチモン(V)ポルフィリン錯体の合成し、そのキャラクタリゼーションを行った。その結果、特に蛍光スペクトルの測定において、従来のアルコキシド軸配位子を持つポルフィリンよりも今回合成したポリフィリンの方が蛍光量子収率が顕著に減少するという大変興味深い結果が得られた。このことは、フェノキサイドのπ電子計からアンチモン(V)ポルフィリンの励起一重項状態への分子内荷移動が起こり、分子内CT状態になったためと考えられた。すなわち、導入した軸配位子は電子共与体として機能したと言える。従って、今回行った本研究の結果は、導入する軸配位子の機能(電子的効果)によって、アンチモンポルフィリン錯体からの分子内電子移動が十分に引き起こせることを強く示唆している。
|