研究概要 |
アリル型ホウ素化合物の調整とカルボニル化合物との有機合成反応について研究した。1-アルキンの三臭化ホウ素でのハロボレーション反応により得られる、2-ブロモ-1-アルケニボランから、有機亜鉛試薬とのクロスカップリング反応によるアルキル化、ジブロモメタンによるホモロゲーション反応を経て3,3-二置換のアリル型ボランを誘導できた。1-アルキンとしてはブチン、ヘキシン、フェニルアセチレン等が使用でき、高いジアステレオ選択性で対応する2-ブロモ-1-アルケニルボランを与えた。しかし、プロピンを用いた場合、他の1-アルキンと比べて選択性が低下することがわかった。有機亜鉛試薬としては、Me、Et、Phなど種々利用できることが明らかとなった。 不斉合成を目的として得られた3,3-二置換のアリル型ボランのホウ素上のアルコキシ基を酒石酸エステル誘導体として、種々アルデヒドと反応させることにより光学活性な四級炭素を持ったホモアリルアルコールを合成した。最初に使う、アルキンと有機亜鉛試薬を選択することにより生成物の水酸基のシン-アンチの位置に自由に置換基を導入できることを見いだした。反応のジアステレオ選択性は98〜95%、エナンチオ選択性は80〜70%である。 また、アリル型ホウ素化合物の新規合成法として遷移金属触媒による異性化反応を用いる方法を調査した。3-アルコキシアルキンをハイドロボレーションすることで立体選択的に3-アルコキシビニル型ホウ素化合物が合成できる。得られた3-アルコキシビニル型ホウ素化合物をイリジウム触媒により異性化すると穏和な条件でアリル型ホウ素化合物に異性化することを見いだした。ルテニウム、ニッケル、ロジウム等では反応はうまく進行しなかった。立体選択性はホウ素上のアルコキシ基によって異なるが、ピナコールエステルではE体選択的に、イソプロポキシ基でZ体選択的に異性化することを見いだした。
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