研究概要 |
まずはじめに三塩化バナジウムをテトラヒドロフラン(以下THFと省略)中で加熱してTHF付加錯体[VCl_3(thf)_3](1)を合成し、1に対してトリオールR-C(CH_2OH)_3(R=Me,Et)をTHF還流下で1日反応させたところ、THFに難溶の緑固体(2)が得られた。錯体2はペンタン、トルエンに不溶、メタノール、ジクロロメタンに微溶であった。THFより再結晶した2について単結晶×線構造解析を行ったところ、2は二核錯体でトリオールが二分子架橋配位、塩素が末端配位している[{μ-RC(CH_2OH)(CH_2O)}VCl_2]_2(R=ME,Et)であることがわかった。本研究の目的にはトリオールが末端配位、塩素が架橋配位であるものの方が合致するので、そのような構造の二核バナジウム錯体を合成するために次に1を亜鉛で還元して既知の二核錯体[(thf)_3V(μ-Cl)_3]^+(Zn_2Cl_6)^-(3)を合成し、3に対してトリオールやトリオールより誘導したトリエーテルを作用させたところそれぞれ生成物が得られた。これらの生成物については元素分析、赤外分光スペクトルより添加したトリオールやトリエーテルがバナジウムに配位しているものと考えているが、詳細の構造は解析中である。一方、立体構造が架橋配位しにくく、末端配位形式を取り易いように置換基等で修飾したトリオール誘導体やトリアミンによる錯体合成についても現在研究を展開している。
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