研究概要 |
1.非対称ジカルコゲニドの合成 Φ_3P=S[Φ=2,6-(MeO)_2C_6H_3]とハロゲン化アルキル及び各種チオールR'SH(R'=Ph,4-MeC_6H_4,n-C_8H_<17>)から非対称ジスフィドR'SSRが好収率で合成できる例は既に報告されている[M.Wada,他,BCSJ(1991)]。しかし、Φ_3P=Seを用いて同様の反応を行なったところ、[Φ_3P-R]Xが副生し、R'SSeRの収率は低かった。そこで本研究ではΦ_3P=Seの代わりにΦ^*_3P=Se[Φ^*=2,4,6-(MeO)_3C_6H_2]を用いてジカルコゲニドの合成を検討した。すなわち、Φ^*_3P=Seとパラ位に置換基を有する塩化ベンジル4-ZC_6H_4CH_2Cl[Z=H,Me,MeO,Cl]とΦSHと反応させると対応するチオセレニド4-ZC_6H_4CH_2SeSΦをワンポットで収率よく(77-84%)得ることができた。ろ液をNaOH水で処理すると,Φ^*_3P収率よく(84-86%)回収された。Rはアルキル基やアリル基、また、R'SHとして2-ピリジンチオール、4-クロロベンゼンチオールなどに応用できると考えている。今後はこれらのジカルコゲニドの反応性を検討していきたい。 Φ^*_3P=Se+4-ZC_6H_4CH_2Cl+ΦSH→4-ZC_6H_4CH_2SeSΦ+[Φ^*_3P-H]Cl 2.金属酸化物を原料とする有機金属化合物の合成 一般に,有機典型金属化合物は加水分解性の金属塩化物と有機リチウムあるいはグリニヤール試薬の反応で合成されている。金属酸化物から容易に金属チオラートが合成でき,さらに有機リチウムなどの反応で有機金属化合物が得られるようならば利点が多い。 (式1)の反応により(ΦS)_3M(M=As,Sb,Bi)が収率78-89%で得られた。これらは非加水分解性の結晶性化合物で取扱いが容易である。さらにリチウム試薬RLi(R=Ph,4-MeC_6H_4,4-Me_2NC_6H_4)と反応させるとR_3Mが収率48-79%で得られた(式2)。また,ΦSLiに酸を作用させるとΦSH(無臭,結晶性)がほぼ定量的に回収できるので再使用が可能である。 M_2O_3+6ΦSH+HCI→2(ΦS)_3M(式1),(ΦS)_3M+3RLi→R_3M+3ΦSLi(式2)
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