研究概要 |
ここ数年、ナノテクノロジーを意識した化合物が、意欲的に合成されている。その中の一つである“合成ナノチューブ"については他の機能性分子に比べて報告例が少ない。この報告例が少ないのは、主に(1)合成が困難であること、(2)環状化合物を基体とするため、利用できる化合物が限られていること、(3)生成物が高分子量となるため溶解性が低いこと、などが原因として考えられる。 今回我々は、(1)、(2)の問題を解決するために大環状化合物で、しかも修飾が容易なカリックス[4]アレーンを基体とし、(3)の問題点を解決するため架橋部位にエチレングリコール鎖を有するナノチューブの合成を行った。まず、適当な置換基を水酸基側に導入することにより、カリックスアレーンが1,3-交互型を取るようにコンホメーションを固定化した。この結果、この基体は両末端にそれぞれ2カ所の反応点を有し、この2点を連結することによりナノチューブの合成が可能となる。実際に2量体を合成するため、片端にアルキルクロライドを2つ持つ化合物とアルコールを2つ持つ化合物をそれぞれ合成し、これら2つの化合物間でWilliamson反応を行った。この結果、1,3-交互型のカリックス[4]アレーンが2つ連結された化合物を合成することに成功した。この同定は、^1H-NMR、MSスペクトル、および元素分析により行った。また、この化合物は、カリウム、および銀イオンを錯化することが可能であり、今後膜透過実験に応用ができるものと期待される。 今後、今回用いた合成方法により2量体のみならず3量体、5量体というように、長さの制限された合成ナノチューブの生成が可能となるであろう。
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