研究概要 |
本研究では、光照射で誘導される配位子の立体構造変化により基質の金属への配位が動的に制御されて反応を促進あるいは抑制するような光応答錯体触媒系を開発することを目的として、光応答性分子としてアントラセン誘導体を架橋部位にもつ複核金属ポルフィリン錯体触媒を合成した。すなわち、Becker等の方法でアントロンを原料として得た1,2-ビス(10-ヒドロキシ-9-アンスリル)エタンと塩化チオニルで酸ハロゲン化した5-(4'-クロロカルボキシフェニル),10,15,20-テトラフェニルポルフィンをベンゼン中でカップリングさせることにより複核ポルフィリン錯体を合成し、今年度科学研究費補助金により購入した紫外・可視分光検出器を取り付けた中圧分取液体クロマトグラフィー(シリカゲル充填、クロロホルム-アセトニトリルで溶出)で粗結晶を精製し、^1H-NMR測定等により同定した。複核ポルフィリンの光照射(キセノンランプ、窒素下、5℃)前後での光二量化(分子内4π+4π環化付加反応)から熱的解離復元する際の半減期を、光二量化シクロブタン部分の、^1H-NMR相対強度測定から評価し、さらに、ポルフィリンの中心金属にマンガン(II)あるいはルテニウム(II)を挿入して既存の酸素酸化反応(マンガン(II)錯体によるトリプトファン二原子酸素添加酸素様反応、あるいはルテニウム(II)錯体によるコバルト(II)錯体の不斉酸素酸化反応)との組合せによる高効率光応答性酸素酸化触媒反応系の構築を現在試みている。いずれの酸素酸化反応においても活性酸素種O_2-を効率よく産生させることが触媒活性を高めるために反応機構上重要であり、一酸化窒素を触媒系に導入した場合のNO錯体形成と光解離が活性酸素種生成(すなわとO_2-不均化抑制)に有効に作用するかどうかを今後さらに検討する予定である。
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