比較的合成が容易であり、安定な錯体であるトリクロロシクロペンタジエニルチタニウム(η-C_5H_5TiCl_3)-メチルアルミノキサン(MAO)ならびにトリクロロペンタメチルシクロペンタジエニルチタニウム(η-C_5(CH_3)_5TiCl_3)-メチルアルミノキサン(MAO)の両触媒系を用いて、それぞれスチレンの重合を行い、得られたシンジオタクチックポリスチレン(SPS)ポリマーについてキャラクタリゼーションを行った。その結果、η-C_5(CH_3)_5TiCl_3-MAO系で得られたSPSポリマーは、η-C_5H_5TiCl_3-MAO系で得られたSPSポリマーに比べて高分子量かつ高立体規則性を有している事が分かった。また、アルキル鎖の長さを変えて、電子状態および立体的な崇高さを変化させたp-アルキルスチレン(メチル、エチル、プロピル、ブチルスチレン)を合成し、η-C_5(CH_3)_5TiCl_3-MAO触媒系を用いて重合を行った所、メチルスチレンでは高シンジオタクチックな立体規則性を持つポリマーが得られ、エチル基以上の長さを持つアルキルスチレンでは立体規則性の低いポリマーが得られた。この結果は、シンジオ立体特異性を有する活性点まわりは、立体的に非常に狭く、エチル基以上の長さを持つアルキルスチレンでは活性点に配位することができない事を意味している。上記の結果から、シンジオ立体特異性を有する活性点形成には、配子やモノマーの立体的な崇高さの違いが大きく影響を与える事が分かった。η-C_5(CH_3)_5TiCl_3のみを触媒として光を照射してスチレンの光重合を行った所、低立体規則性を有するポリマーしか得られなかった。そこで現在、配子であるペンタジエニル基の修飾を行い活性点まわりの立体的な崇高さをコントロールする事で光励起によりシンジオ立体特異的な活性点形成を有する触媒の開発を行っている。
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