本研究は、棒状高分子であるポリ(α-グルタミン酸エステル)と、結晶性の良いポリオキシエチレン(POE)とから成るジブロック共重合体について、固体状態における構造特性および構造制御法の解明を目的としている。片末端にアミノ基を有する、分子量分布の狭いPOEを開始剤として用い、L-グルタミン酸ベンジルエステルのN-カルボキシ無水物を重合することにより、目的のジブロック共重合体PBLG-POEを得ることができた。この試料の各成分に対する共通良溶媒の溶液からキャスト法により作成したフィルムのX線回折パターンより、棒状PBLGと結晶性POEの各成分は結晶化していることがわかり、前者はフィルム面に対して垂直方向に配向し、後者は分子鎖軸をフィルム面と平行にして結晶化していることが明らかになった。また小角X線散乱測定を行ったところ、PBLGとPOEとのミクロ相分離に由来するピークを確認することができなかった。そこでゲル浸透クロマトグラム測定を行ったところ、重合した試料の分子量分布は大変広いことがわかった。これらの結果から、PBLG-POEジブロック共重合体では、PBLG鎖は棒状構造を保持しており、各ブロック成分が凝集してドメインを形成し結晶化しているものの、棒状高分子ブロックの多分散性のため規則的なミクロ相分離構造がとれないことが推測される。そこで、得られた試料を溶解度分別することにより分子量分布の狭いポリマーを得ることを試み、この操作は現在も進行中である。今までに得られた分別試料の核磁気共鳴およびX線回折測定を行ったところ、高分子量成分中ではPOE鎖の結晶化は認められなかった。即ち、POE鎖が結晶化するためには、棒状PBLGがある程度短いことが必要であり、ジブロック共重合体の組成比と結晶化度の関係を単分散試料を用いて明らかにできることがわかった。
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