研究概要 |
本研究では、液晶状態特有の構造を反映させた液晶性ポリウレタン固体試料の構造と分子運動を固体^<13>C NMR法により解明することを目的とした。試料には、メソゲンとして3,3'-dimethyl-4,4'-biphenyldiyl diisocyanate、スペーサーとして1,10-decanediolを反応させ合成したポリウレタンを用いた。DSCおよび偏光顕微鏡により等方相からの冷却過程を観察した結果、液晶化が208℃で、また結晶化が205℃で観察されたが、室温においても液晶相が残存していた。この試料を溶融状態から1℃/minで徐冷し液晶状態を経て結晶化させた試料(試料A)および急冷した試料(試料B)に対し、分子運動と構造を固体^<13>C NMRにより調べた。試料AとBの^<13>Cスピン-格子緩和時間T_1cの測定から得られた10^8Hz程度の運動は試料Bの方が高かったが、2D Switching angle sample spinning 法による化学シフト異方性測定により得られた。10^3Hz程度の運動には違いがなかった。このことは、局所的な運動のみが熱処理により変化することを示している。また、このT_1測定より、室温で結晶・中間・非晶の三成分が存在することがわかった。この三成分の共鳴線をCPT1法および飽和回復法により分離しメチレン鎖のコンホメーションをr-gauche効果に基づき詳細に検討した結果、結晶・中間成分ではメチレン鎖は全てtransであるのに対し、非晶成分ではtransの結合とtrans-gauche間の遷移を起こしている結合が交互に入ることがわかった。このことは、ポリエチレン等の非晶成分のメチレン鎖がランダムなコンホメーションであることと比較すると極めて特徴的である。偏光顕微鏡の結果を考慮すると、本試料の非晶成分は液晶状態を反映したコンホメーションをとっていると推察される。
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