直流及び交流電場下での高分子ブレンドの相分離挙動について検討した。試料として下限臨界共溶温度(LCST)を有するポリ2クロロスチレン(P2CS)/ポリビニルエチルエーテル(PVME)ブレンド、及びこのブレンドに過塩素酸リチウム(LiClO_4)を0.5wt%ドープしたものを用いた。 先ず光散乱測定により相図を作成した。LiClO_4を入れた系では相溶性の悪化が観察された。また電場印加による相分離温度の変化についても検討したが、実験誤差の範囲内でほとんど変化は認められなかった。小角X線散乱測定より一相領域における濃度ゆらぎの相関長とスピノ-ダル温度を決定したが、これに関しても電場による変化は認められなかった。 相分離構造の観察のため、金及び銀(電極)を蒸着したスライドガラス上にブレンド試料を成形したものを用いた。そして温度ジャンプによる相分離を電場下で誘発させ、位相差顕微鏡によりモルフォロジー観察を行った。その結果、相分離初期においては、ほとんど電場の影響は現れず、等方的な共連続構造が発現した。しかし、相分離の進行と共に相分離ドメインの粗大化とドメインの電場方向への配向が観られた。このドメイン配向は、界面分極の発生による電場方向への電気的力の作用の結果起こったと考えられる。特にLiClO_4をドープした系では、その傾向が顕著であった。またITOガラス(透明電極)で試料を挟み縦方向に電場を印加した場合は、相分離後期において対流によるロールパターンが発現し、相分離ドメインが対流に沿って配向している様子が観察された。今後はこのような様々な相分離モルフォロジーが、交流電場の周波数によってどの様に変化していくかを検討する予定である。
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