研究概要 |
最近、大気圏再突入可能な宇宙用往還機の開発のため、ストーカーチューブやアーク風洞などの高エンタルピー風洞を用いた実験が行われるようになってきている。したがって、本研究では上述の風洞内の高速高エンタルピー流の診断を目的する。今回本科学研究費により、その測定装置である半導体レーザー吸収分光計の開発を行い、さらに高速高エンタルピー流の測定実験例として、宇宙用推進機であるアークジェットプラズマ流の診断が成功理に行われた。半導体レーザー吸収分光計の立ち上げ時においては、まず1)半導体レーザーの狭線化と温度制温による周波数の安定化を行い、次に2)アルゴン放電セル吸収線を基準としたアークジェットプラズマ流速の測定を行った。アークジェットプラズマ流速測定においてはその平均流速を測定することは可能となったが、測定流速が約500m/s以下になると、現在の測定系では実際上、精度的に測定が困難であることがわかった。しかし、この問題は測定系において周波数の"物差し"の役割を果たしているファブリー・ペロ-共振器(エタロン)の光学的精度を向上させれば解決できる。 この半導体レーザー吸収分光の利点は,同時に流れ場の速度,温度,密度の測定が可能であるということである.したがって、本科学研究費により、さらにアークジェットプイラズマ流の温度,密度の測定も行った。しかしながら、よく知られているとおり吸収分光法には欠点がある。それは測定さた温度,密度、速度などの計測値は、レーザー光路の積分値、すなわち平均値になってしまうことである。これでは高速高エンタルピー流の内部構造を3次元的に観測把握することは不可能である。そこで,この欠点を補償するためコンピューター断層法を用いて積分されているそれぞれの測定値を各点のデータに分解することを試み、それに成功した。今後の課題としては、測定精度のさらなる改善と、非定常高速高エンタルピー流に対応した高速データ取得を試みる予定である。
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