研究概要 |
1.非線形応力-ひずみ応答:CFRP擬似等方性積層板の乾燥試験片と吸湿試験片の巨視的な応力-ひずみ応答を室温下で測定すると同時に,微視的な損傷進展を調べた。両試験片ともに,応力550〜600MPa位で応力-ひずみ線図に非線形が生じる。試験片側面の観察と超音波顕微鏡(SAM)による内部観察により,この非線形性が試験片長手方向にわたる自由緑からの層間剥離(エッジデラミネーション)に起因することが明らかにされた。さらに非線形発現後,弾性率の低下と永久歪の増大がみられる。き裂の発生も観察されたがこれによる弾性率の低下はほとんど見られず,応力-ひずみ応答への影響は無視できる。吸湿試験片では湿熱残留応力の緩和により,自由緑で観察される損傷の発生応力は乾燥試験片のそれより高くなるが,SAM観察から明らかにされたエッジデラミネーション進展応力は乾燥試験片の方が高くなる。 積層板の構成方程式と残留応力:残留応力を考慮した擬似等方性積層板の構成方程式から引張応力下の応力分布を調べた。湿熱条件により自由緑における応力分布は異なり,それが損傷の発生と進展に影響を与える。90度層内では自由緑近傍で応力が高く,き裂は自由緑から発生しやすい。90度層に隣接する45度層の線維に垂直な方向の応力分布は,乾燥試験片では内部でより応力が高く,内部でのき裂の発生が説明される。層間応力の計算により,積層板の剥離発生位置と剥離モードが予測される。また,エッジデラミレーションを有する積層板の弾性モデルを提唱し,ヤング率とポアソン比を予測する式を導出して実験結果と良い一致が得られた。
|