調査対象地として、埼玉県所沢市西部、および東京都東大和市に点在するコナラ林を選んだ。野外での調査が迅速に行える方法として、ライントランセクト法による高木林調査手法を新たに開発した。これは、ライントランセクトに沿った毎木調査、実生・稚樹の組成および個体数調査、林床被覆状況調査、および林床フロラ調査を組み合わせたものである。高木林を構成する各階層の状況がこれで把握されるのに加え、各階層の場所による変化が共通した一次元の位置情報との対応で示されるため、階層間の相互関係の分析も容易であるという利点を持つ。 本法による調査を、埼玉県所沢市西部のコナラ高木林17ヶ所に40の調査地点を設けて実施し、植生の組成と構造を分析して今後の植生遷移の可能性を考察した。高木中ではコナラの個体数が多かったものの、亜高木中ではエゴノキの個体数が多く、コナラの個体数はその2割弱であった。調査地一帯では、コナラ林はやがてシラカシ林へ遷移すると言われている。植生管理が停止されている場所では林床に木本植物が多数生育していて、低木や稚樹中には確かにシラカシの個体が多く見られ、コナラはほとんど見られなかった。加えて、ヒノキも多くの個体が低木や稚樹として見られ、亜高木や高木の個体もあった。種子を供給する母樹が林内にあることもあって、ヒノキがシラカシと競争しつつ今後の植生で優占する可能性は否定できない。そのため、今後の遷移管理においてコナラ林をシラカシ林へと誘導する場合には、ヒノキの個体群管理が一つの問題になり得る。 東大和市における調査では、皆伐後の植生遷移において、林床管理によって種組成がリョウブ優占型からコナラ優占型へと転換していくことが示された。これらの結果から、東京近郊の台地、丘陵地においては、植生をコナラ林あるいはシラカシ林へと誘導するために、林床管理による遷移の促進が有効であることが明らかになった。
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