研究概要 |
冬季のトマト栽培において,夜温を高めると果実の成熟するまでの日数は顕著に短縮するものの,1日あたりの果実肥大速度はあまり高まらないために,果実は十分に肥大せず小果で収穫される.夜温を高めても果実肥大速度が高まらない理由を調べるために,最低気温を5, 10, 15, 20℃に設定したハウス内で養液栽培によりトマトを一段栽培し,夜間における果実肥大をレーザー判別センサーにより測定し,同時に果柄部師管滲出液をEDTA法により採取し,グルコースおよびスクロース濃度を酵素法により測定した. 果実の肥大速度は正午付近をピークとし,その後,夜間から早朝にかけて低下した.また,各区での肥大パターンの変化を比較しようとしたが,ノイズが大きく明確な比較はできなかった.一方,果柄部師管滲出液中のスクロース濃度は果実肥大と類似した日変化を示し,日中にピークとなり,夕刻から早朝にかけて次第に低下した.このことから,果実肥大は師管液中のスクロース濃度と関係が深いと示唆された.また,5℃と20℃で比較したところ,どちらも類似した日変化を示すものの,20℃と比較して5℃では,夕刻から早朝にかけてのスクロース濃度の低下は緩やかであった. 現在,果実肥大と師管滲出液中のスクロース濃度との関係について,さらに詳細に検討中である.また,果実および葉を定時的にサンプリングして,糖およびデンプン濃度を測定する予定であり,これらの結果を総合して夜温と果実肥大並びに同化産物の転流について考察する予定である.
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