研究概要 |
本実験は,アジサイにおける装飾花の発生要因を解明することを目的として行った.走査型電子顕微鏡を用いたアジサイの花序形成過程の観察において,花序原基は1個の原基から3個の原基に発達したが,花序周縁部では1個の原基から2個の原基に発達するものも認められた.そこで,花房周縁部にのみ装飾花が着生する額咲きアジサイを用いて,花序軸の分枝パターンと装飾花の発生との関係について調査を行った.その結果,1)花房中心部の花序では,花序軸は3つに分枝する傾向にあること,2)花房の周縁部に位置する花序ほど,花序軸が2本に分枝する傾向にあること,3)額咲きアジサイでは,花序軸が2本に分枝した際,一方の軸には花序が着生し,もう一方の軸には装飾花が単独で着生するというパターンで装飾花が着生することが明らかとなった.また額咲き品種である‘紅ヤマアジサイ'において,小花数が多い株では花房中心部の花序の花序軸が長く,全体として円錐状の花序となる傾向が認められた.その場合,花房中心部の花序においても,花房周縁部と同様に花序軸が2つに分枝し,装飾花が着生する傾向が認められた.以上の結果から,額咲きアジサイにおいて花序軸の分枝パターンは花序全体における着生位置により異なり,装飾花の着生は花序軸の分枝パターンに影響されることが明らかとなった.また手鞠咲きアジサイと同様に,額咲きアジサイにおいても装飾花は花序の着生位置に着生しており,花序となるはずの原基が何らかの要因で小花となった場合に装飾花が発生するのではないかと推察された.植物成長調節物質処理については現在のところ顕著な傾向は見られていないが,更に調査を続けていく予定である.
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