研究概要 |
クエン酸放出型低リン酸耐性は,クエン酸の放出によりリン酸Alのリン酸を可溶化する能力に依存している.本研究では,このクエン酸放出において,糖代謝の変異が及ぼす影響を遺伝子組換えにより解析した.その要点は以下にまとめられる. 1)高頻度組換え系の確立. 従来のアグロバクテリウム系で用いられるpB1121を用いた場合,カナマイシンによるスクリーニング効率で低いこと,LBA4404株の感染力が弱いことから低リン酸耐性細胞に導入することは困難であった.ここでは,改良型ベクターpIG121-Hmを用いてハイグロマイシンによるスクリーニングを可能としたこと及び感染力の高いEHA101株を用いることにより,低リン酸耐性細胞に高頻度で遺伝子を組換えることが可能となった. 2)クエン酸合成酵素遺伝子の単離と抗体の迅速調製. ニンジン黒田5寸cDNAライブラリー由来のクエン酸合成酵素cDNAのほぼ全長を単離した.この全長にあたる1.1Kb及び5'末端側0.4KbをpIG121-HmのイントロンGUS部に挿入し、アンチセンス組換え体を30系統ずつ作製した.尚,本遺伝子を大腸菌発現系で過剰発現させ,His×6tagをターゲットに精製した蛋白に対する抗体を作製した.この抗体は免疫滴定の結果からCSを認識すると考えられ,ウェスタンブロッティングでは,単一バンドを与える品質であり,CS発現量を解析することが可能となった.アンチセンス組換え体では,クエン酸合成酵素の発現が抑制されていることが期待でき,以後,今回獲得した組換え体の同酵素の発現量と低リン酸耐性の関係を明らかにすることが可能となった.
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