Arbuscular菌根共生系における菌根菌から宿主植物へのリン酸移行のメカニズムを解明する目的で、共生特異的に発現する酸性およびアルカリ性ホスファターゼの性質について検討を行った。 1.共生特異的酸性ホスファターゼ(infection-specific acid phosphatase ; ISPase) (1)N末端アミノ酸配列の決定:精製された酵素標品よりN末端アミノ酸配列15残基を決定した。さらに、この配列を基にタンパク質データベース上で相同なものを検討したところ、他の植物の酸性ホスファターゼのN末端配列と相同性が高かった。このことはISPaseが宿主植物由来であることを強く示唆していた。 (2)活性発現部位の推定:菌根における酸性ホスファターゼ活性部位を組織化学的方法により調べたところ、主に菌根菌組織の周辺部や植物根の細胞壁部分で高い活性が認められたことから、ISPaseは分泌型の酵素であることが予想された。また、ISPaseが根の分泌液中から検出されたことも仮説を支持していた。 2.アルカリ性ホスファターゼ (1)粗酵素液調製法:共生状態の菌根菌組織に特異的に発現するアルカリ性ホスファターゼの機能を推定するために、宿主根をセルラーゼなどで消化後、菌根菌組織を顕微鏡下で摘出し、そこから得られる可溶性および不溶性画分におけるホスファターゼ活性を測定する方法を確立した。 (2)特異的阻害剤と基質特異性:本酵素の活性はベリリウムにより特異的に阻害された。また、このことを利用して基質特異性や動力学定数などを求めたところ、糖リン酸に対する基質特異性が高いことが明らかになった。
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