神経伝達物質の開口放出を特異的に阻害する生理活性物質を得るため、PC12細胞からの脱分極刺激に応じたノルエピネフリン(NE)放出阻害を指標としてカビおよび放線菌の培養抽出液の検索を行った。再現性よく阻害活性が認められたカビからの2サンプル(LF11039、LF10512)、および放線菌からの2サンプル(LS9940、LS8877)について、好中球からのβ-グルクロニダーゼ放出に対する作用を調べた。その結果LF11039、LF10512、LS9940はいずれも強い阻害活性を示したが、LS8877は殆ど阻害しなかった。このことから前三者は膜融合過程など調節性分泌に共通する過程の阻害剤であること、またLS8877は神経分泌に特異的な阻害剤であることが示唆された。 次に最も活性の強いLF11039物質の精製を試みた。生産菌を大量培養し、菌体から80%アセトン抽出、酢酸エチル転溶を行った後、ヘキサン-メタノール系およびクロロホルム-メタノール系のシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、約19mgの淡黄色の結晶を得た。本物質は230、252、320、370nmの各波長に吸収極大を示し、またFAB-MSスペクトルでは、(M+Na)^+:m/z=413、(M+K)^+:m/z=429にイオンが観測され、本物質の分子量が390であることが推定された。^1H-NMRスペクトルには9個のプロトンシグナルが認められ、全て芳香環に結合したプロトンと考えられた。^<13>C-NMRスペクトルからは15〜16本のsp^2の炭素のシグナルが観測され、本物質はすべての炭素原子がSP^2である芳香族多環性物質であると考えられた。しかし最終的な構造決定には至っていないことから、引き続き精製・機器分析を行い、活性物質の構造を明らかにする予定である。
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