研究概要 |
アミン酸化酵素(AO)は、新規なキノン化合物tri-hydroxyphenylalanine(TOPA)キノンを補酵素として有する。TOPAキノンの生成については、酵素分子内の特定のチロシン残基がAO分子内に配位している銅によって自動酸化されて生じる可能性が報告されている。 本研究では、本酵素の活性発現のメカニズムを解明することを目的として、既にcDNAの得られているかびAspergillus niger由来の銅含有AOについて、AO分子内における銅結合リガンドと考えられるヒスチジン残基の同定及び他起源のAOと比較して高度に保存されているアミノ酸残基の役割について、遺伝子工学的手法を用いて解析を行った。 AOにおける銅結合のリガンドとして以前より3つのヒスチジン残基の存在が予想されている。AOのヒスチジン残基のうちで他起源のAOとの相同性の高いもの4残基(His-4,His-377,His-433,His616)についてsite-dierected mutagenesisにより変異を導入してそれぞれのヒスチジン残基をアルギニン残基に置き換えた変異AOを作成した。その結果、変異酵素H377R、H433R、H616Rにおいては、酵素活性およびTOPAキノンの生成が認められず、これらアミノ酸残基が銅結合のリガンドあるいはTOPAキノン生成に重要な働きをすることが示された。また、他起源のAOとの比較を行い種を越えて高度に保存されているTOPAキノン近傍のアミノ酸残基(Thr-400,Asn-403,Tyr-404)についても同様にして他のアミノ酸(Thr→Ala,Asn→Gln,Tyr→Phe)に変換した変異を作成した。作成した変異酵素T400A、N403Q、Y404Fのいずれにおいても酵素活性およびTOPAキノンの生成が認められず、これらTOPAキノン近傍の保存されたアミノ酸残基が、本酵素活性発現に重要な役割をしていることが示された。
|