加工食品に無視できないレベルで含まれている酸化コレステロール(OxCHOL)が小腸から吸収されると、肝臓のCHOL生合成と異化を低下させ、一方ではリノール酸不飽和化を亢進することを見出した。このことから、食餌性OxCHOLは代謝諸機能を変動させて、種々の疾病の引き金になる可能性が懸念された。そこで、このようなOxCHOLの生理機能を抑制する食品成分を検索することに焦点を当てて、りんごポリフェノールによる制御機能を検討した。まず、りんごポリフェノールを0.5あるいは2.5%含む(対照は含まない)AIN76純化食にOxCHOLを0.3%加えた飼料をSD系雄ラット(各群7匹)に3週間与えた。飼育終了後、腹部大動脈より採血して屠殺し、肝臓ミクロソームを調製して、リノール酸不飽和化律速酵素のΔ6 desaturase活性を測定した。酵素活性は対照群に比べて、りんごポリフェノールを摂取した群では有意に低下した。また、この活性低下を反映して、血清ならびに肝臓脂質のリノール酸代謝産物/リノール酸は対照に比べてりんごポリフェノール摂取群で有意に低かった。この結果から、りんごポリフェノール食餌性OxCHOLが誘発するリノール酸不飽和化亢進作用を抑制するとともにエイコサノイド産生増大を制御してアレルギーや炎症反応を引き起こしにくくする可能性が考えられた。また、血清と肝臓の脂質成分ならびに過酸化脂質濃度を調べたところ、OxCHOL摂取で生じる変動はりんごポリフェノールの摂取で抑制された。りんごポリフェノールによる代謝調節機能の一因として食餌性OxCHOLの吸収制御が考えられたので、ミセルへのOxCHOL可溶化に対するポリフェノールの影響をin vitroで調べた。その結果、ポリフェノールは濃度依存的にOxCHOL可溶化を阻害した。このことから、OxCHOLが誘発する代謝変動に対するりんごポリフェノールの調節機能の一端はその吸収制御である可能性が推察された。
|