研究概要 |
ナイアシンはトリプトファンから生合成される唯一のビタミンであるが,ヒトではナイアシン欠乏になると,ペラグラなどさまざまな疾病をひきおこすため,トリプトファンからナイアシンへの転換率は栄養学上重要である。この転換率を支配しているのが,トリプトファン・ナイアシン代謝経路の鍵酵素であるアミノカルボキシムコン酸セミアルデヒド脱炭酸酵素(ACMSD)である。ACMSDは,栄養素やホルモンによって変動する(つまりトリプトファンからナイアシンへの転換率も変化する)が,これらの現象のメカニズムは依然不明のままである。そのメカニズムを分子レベルで解明するための第一段階としては,本酵素に対する抗体やcDNAが必要であるので,本年度の計画では,トリプトファンからナイアシン生合成経路の鍵酵素であるACMSDに対するモノクローナル抗体の作製およびcDNAのクローニングを試みた。モノクローナル抗体は,ACMSDで免疫したマウスの脾細胞とマウスミエローマ細胞を融合させて,ハイブリドーマを作製し限界希釈法によりクローニングし,5種類のモノクローナル抗体を得た。次に購入および供与さたcDNAライブラリーからは目的のクローンが得られなかったので,ACMSD活性が高くなるようにホルモン処理を行ったラットの肝臓のcDNAライブラリーの作製をおこなった。ホルモン誘導したラットの肝臓からAGPC法とCsCl法を併用しRNAを抽出し,Oligo(dT)セルロースカラムでpolyA^+RNAの精製をおこなった。これをもとにcDNAの合成を行い,ライブラリーを調製した。現在,作製したモノクローナル抗体でクローニングしている最中である。今後このモノクローナル抗体およびcDNAを用い,トリプトファンからナイアシンへの転換率の栄養素,ホルモンによる変動のメカニズムを分子レベルで調べる予定である。
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