本研究では、体タンパク質代謝において重要なホルモンであるIGF-I遺伝子の転写制御機構を解明する目的で、すでに我々が検出に成功しているラット肝臓の核内因子(A〜J)の遺伝子のクローニングを、South western法およびOne Hybrid Systemの2種の方法を用いて行った。 1)South western法 A〜Jの因子の結合配列のオリゴヌクレオチドを5〜12回タンデムに連結し(A^<tan>〜J^<tan>)、単独の場合より核内因子との結合活性が上昇していることを確認した。続いて、このA^<tan>〜J^<tan>の配列をプローブとしてラット肝臓cDNAの発現ライブラリーをスクリーニングし、A^<tan>〜J^<tan>の配列と結合する因子の検索を行った。 2)One Hybrid System A^<tan>〜J^<tan>の配列をレポーター遺伝子(ヒスチジン合成酵素およびβ-ガラクトシダーゼ)の上流に連結した後、酵母のゲノムDNAに組み込み、レポーター遺伝子の発現のバックグラウンドが十分に低いことを確認した。この系を用いて、レポーター遺伝子の発現を指標としてエフェクター遺伝子(GAL4)の下流に挿入したラット肝臓cDNAライブラリーをスクリーニングし、A^<tan>〜J^<tan>の配列と結合する因子の検索を行った。 現在One Hybrid Systemにより5つのクローンを取得しており、その塩基配列の決定を行っているところである。本研究では、IGF-I遺伝子の5'上流領域と結合してその転写を制御する新規の因子のcDNAが取得できる可能性が高く、IGF-Iの生体における多様な作用を考えるとその重要性は非常に大きい。
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