研究概要 |
近年,世界各国において森林の衰退および樹木の異常落葉が観測されているが,現行の評価方法は記載的,主観的である。本研究の目的は写真画像から算出される樹冠のフラクタル次元が樹木健全度の客観的評価指標として有効であるかを検証することである。 まず,ヨーロッパでの健全度モニタリングにおいて使用されている針葉樹10種,広葉樹9種の基準写真137枚を用いて,コンピュータでの画像処理により2値画像とトレース画像のフラクタル次元(Db,Dt)を算出し,樹冠透過度(CT)との関係を調べた。その結果,DbはCTと負の相関がみられたが,CTの低いところではDbの変化がみられない樹種もあった。DtはCTの増加とともに増大するが,CTが約50%以上では,1.8前後でほぼ一定となる傾向がみられた。また,DbからDtを引いた値(Df)はCTの増加とともに減少し,葉がほとんどみられない樹冠ではその着枝状態に関わらずDfはゼロに近い値を示した。以上の結果から,Dfは樹冠透過度の客観的評価指標として有効であることが示唆され,さらに,Dfは実際の着葉密度と比例関係にあることが推察された。 次に,鹿児島県霧島山系のモミ・ツガ・アカマツと九州大学福岡演習林早良実習場の海岸クロマツの健全度モニタリングを開始した。樹冠の写真撮影を行い,Db,Dt,Dfを計算した。フラクタル次元の季節的変化はみられなかったが,今後も定期的に写真撮影を行い,長期モニタリングを行う予定である。なお,写真画像は長期保存が可能なようにCD-ROMに保存した。
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