研究概要 |
粘液胞子虫類の魚への感染ステージである放線胞子虫胞子を、あらかじめ蛍光色素で標識してから感染実験を行うことで、魚体への進入経路を特定するとともに、宿主特異性がどの段階で発現するのかを明らかにした。3種類の放線胞子(サケ科魚類神経組織寄生性Myxobolus arcticusのTriactinomyxon放線胞子、キンギョ軟骨組織寄生性M.cultusのRaabela放線胞子、コイ結合組織寄生性Thelohanellus hovorkaiのAurantiactinomyxon放線胞子)を蛍光色素5(6)-carboxyfluorescein diacetate,succinimydil-ester(CFSE:Molecular Probes)で染色後、メッシュろ過により胞子を回収した。粘液胞子虫未感染の稚魚(サクラマス、ベニザケ、コイ、キンギョ)をCFSE標識放線胞子懸濁液に30分間侵漬後、5尾を2%パラホルムアルデヒドで固定し、鰭、皮膚、鰓を蛍光顕微鏡で観察した。残りの魚は継続飼育して、数ヶ月後に粘液胞子虫胞子形成の有無を調べた。その結果、CFSE標識された放線胞子の極嚢細胞と感染細胞が体表上皮などの侵入部位に検出されたが、感染経路は種によって異なること(TriactinomyxonとRaabelaは鰭や皮膚、Aurantiactinomyxonは鰓から)が明らかとなった。また、Triactinomyxonはサクラマス、ベニザケのいずれにも侵入したが、M.arcticus胞子形成はサクラマスでのみみらみれたことから、本種における宿主特異性は魚体内に侵入後、発現することがわかった。一方、Aurantiactinomyxonはコイに侵入し、T.hovorkai胞子を形成したが、キンギョには侵入も胞子形成も見られなかったことより、本種の場合は侵入の時点で魚種を認識できることが示唆された。本研究より、粘液胞子虫における宿主特異性の発現は種類によって異なることが明らかとなったが、そのメカニズムは種ごとに異なると考えられ、今後の課題として残された。
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