研究概要 |
土壌および温泉環境に生息する藍藻の二次代謝産物に関し、研究を行い以下の成果をあげた。 まず、大学近郊の温泉、水田などより採集を行い、実験室に持ち帰り、予備培養後、単離を試みた。その際、培養温度を2段階に設定したところ、高温でのみ生息するものも見られた。これらにつき、中規模培養を行い、その藻体及び培養ろ液を抽出、粗分画し、各種プロテアーゼ阻害活性試験を行った。その結果、トロンビン、パパインに強い活性をもつものが多数認められた。これまで、藍藻類ではパパイン阻害活性がみられることは少なく、またトリプシンなどに阻害活性を示すことなくトロンビンに阻害活性が認められることもほとんどなかったので、新しいタイプの阻害物質が生産されていることが示唆された。このうち、Chroococcus属の1種は広範囲の酵素に阻害活性を示したが、特にトロンビンには非常に強い活性を示し、有望である。そこで、それらにつき大量培養を行い、活性物質の精製を試みているところである。 また、コレクションより入手した藍藻について酵素阻害物質の探索を行い、以下の物質を得ることが出来た。Microcystis viridisからトロンビン阻害活性を示す互換異性のあるペプチドaeruginosins102-A,Bを単離・構造決定した。Plectonema radiosumからはトリプシン阻害活性を示すジペプチドradiosuminを単離・構造決定した。Nostoc minutumからエラスターゼに阻害活性を示すAhpを含むデプシペプチドnostopeptins A,Bを単離・構造決定した。さらに、同じ藻体からやはりエラスターゼ阻害活性を示す3環性のペプチドmicroviridin類を単離・構造決定することができた。
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