研究概要 |
魚の加工処理残滓の有効利用は、未利用資源の有効利用の点、並びに地域環境の保全の観点から非常に重要である。そこで本研究では残滓を有効に利用するための基礎的知見を得ることを目的として、残滓中の内臓に含まれるプロテアーゼに焦点を当て、その性質を明らかにするとともに、自己消化により残滓中に多く含まれるタンパク質をエキス成分として回収する方法について検討した。 1.内臓消化酵素の性質の検討:(1)安定性:粗酵素液を氷蔵した場合,カゼイン分解活性は少なくとも10日間安定であり,また10℃で24時間加熱したときの残存活性は61.0%と,低温域では比較的安定であった。(2)至適温度:低温域では自己消化活性,カゼイン分解活性ともに低く,10℃でそれぞれ最大活性の20.5%,2.3%であった。高温域では両者とも強い活性を示し,55℃で最大となった。(3)至適pH:自己消化活性はpH9.0,粗酵素液はpH10.6で最大活性を示しアルカリ域で強い活性を示した。阻害剤の影響:カゼイン分解活性は,PMSFで47.4%,STIで70.1%阻害され,E-64でも24.5%阻害された。このことから内臓中にはセリンタイプのプロテアーゼばかりではなく,一般的に消化酵素には存在しないとされるシステインタイプのプロテアーゼの存在が示唆された。 2.消化条件の検討:消化前後のエキスを比較すると,旨味・不快味共に消化後の方が強く感じられた。また頭部の代わりに可食部である背部普通肉を用いたところ,不快味はあまり感じられなかった。このことから,自己消化エキス中の不快味は,消化によって増加する各種窒素成分や頭部に起因しているものと考えられた。次に全頭部(A),鰓除去頭部(B),鰓・血液除去頭部(C)の3種の頭部からエキスを調製したところ,食味試験において,(A)<(C)<(B)の順に不快味が強く感じられ,鰓・血液の除去によっては不快味を軽減できなかった。
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