研究課題/領域番号 |
08760209
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研究種目 |
奨励研究(A)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
農業経済学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 幸一 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (80272441)
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研究期間 (年度) |
1996
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研究課題ステータス |
完了 (1996年度)
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配分額 *注記 |
1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
1996年度: 1,100千円 (直接経費: 1,100千円)
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キーワード | 管井戸 / 灌漑水市場 / 効率性 / 所得分配 / 地下水資源の枯渇 |
研究概要 |
本研究では、灌漑とりわけ地下水灌漑における市場機構の役割と限界について、研究を行った。インド、バングラデシュにおける稲作を中心とする1980年代の急速な農業成長の原動力となったのは管井戸(tubewell)の掘削、および管井戸による灌漑水を売買する村レベルにおける市場の発達であった。灌漑水市場は概してよく機能しており、そこに顕著な非効率性の存在を認めることはできない。また灌漑水の取引の代替物として、季節的な土地の貸借市場の発達(チャウニア)がみられる地域も存在する。チャウニアを含む灌漑水市場の発達は、管井戸を掘削することのできない貧農にも収益性の高い灌漑農業の機会を与え、農業成長に大きく貢献した。 しかし一方で、市場機構を通じた灌漑水の取引は、第一に所得分配の不平等化を促進したこと、第二に地下水の無秩序な汲み上げを奨励し、地下水資源の枯渇という深刻な事態を招いたことなど、大きな限界もあらわになっている。こうした問題を克服するためには、一定程度の政府の規制や、それが難しいところでは村レベルでの共同体による自主規制などが必要となってくる。ただし、とくにインド、バングラデシュのコンテクストでは、「市場の失敗」を上回る「政府の失敗」や共同体の脆弱さがボトルネックとなる可能性があり、細心の注意が不可欠である。市場機構の利点を最大限に生かしつつ、一定の規制を加えていくという困難な制度的革新が要求されるところである。
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