研究概要 |
イネに振動を与え,ウンカを誘因する農業機械の開発のための基礎的実験を行った。得られた知見は以下の通りである。 1.加振および測定システムの開発について 擬似生物振動を加振源としたイネの微小振動解析,および擬似生物振動を自由に作成できる装置の開発のために,微小な振動の測定が可能な超軽量の加速度センサであるAEセンサ(NF AE-903N)を加振と測定に用いた。加振波形はFunction Synthesizer(NF 1915)で決定し,出力信号はAmplifer,AE Discriminatorを通じて,Oscilloscopeを用いて測定を行った。この結果,砂糖粒一つの落下によってイネの茎に伝えられるわずかな振動レベル,あるいは指先でイネの茎を軽く擦るわずかな振動レベルについて時間領域での解析および,FFT Analyzerによる周波数領域の解析を可能とし,ウンカの振動を測定できる可能性を明らかにした。 2.稲の微少振動伝達特性について イネ(コシヒカリ:筑波大学農林技術センター1996年産)に対する入力信号として,主に矩形波によるパルス波形によってイネを振動させ,距離,あるいは茎葉の位置によって振動がどの程度減衰するかを測定した。その結果,AEセンサの加振および測定方向を,イネの茎に対して垂直方向にした場合は,その二つのAEセンサの距離が50mmを越えると測定不可能になった。一方で入力を,イネの茎の軸方向に変化させた場合は,加振パルスによる測定振動の最大振幅は指数関数的に減少するものの,二つのAEセンサの距離が250mmを越えても測定可能であった。よって,パルスの加振振動は,茎に対しての軸方向に加振するのが,ウンカを誘因する上で有効であることを明らかにした。
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