研究概要 |
本研究では乳酸菌の乳酸菌の腸内定着性を細胞生化学的に解明し病原微生物に対する感染予防のための基礎的研究をすることを目的とした。この目的のため申請者らがすでに明らかにしてきたLactobacillus sp.JCM1038株の糖鎖認識部位、レクチン分子の特定さらにレクチン遺伝子を明らかにすることとした。 本菌株のの糖鎖認識部位を赤血球凝集(HA)反応およびTLC-免疫染色法によって検討した。本菌株のHA活性に差は見られたもののヒツジ,ヒトO型、ウマおよびモルモット赤血球を凝集した。またこれらの赤血球をノイラミニダーゼ処理するとヒトO型赤血球に対する活性は消失した。これらのことから糖鎖エピトープとしてシアル酸が関与していることが考えられたが、糖鎖エピトープは複数存在していることも推察された。そこで1038株の抗体を作製し、グロボ系およびガングリオ系糖脂質に対する結合試験をTLC-免疫染色法によって行った。その結果シアル酸を含むガングリオシドGM1、GM2およびGM3に結合し、さらにこれらの糖脂質からシアル酸を除去したアシアロGM1およびアシアロGM2に結合することも明らかとなった。レクチン分子を明らかにするために菌体表層タンパク画分を固定化赤血球と反応させたところ、52および58kDaタンパク質赤血球に結合することが示され、この2種類のタンパク質がレクチンであることが明らかとなった。この2種類のレクチンは陽イオン交換クロマトグラフィーで容易に精製され、現在これらのレクチンの糖鎖認識部位を検討しているところである。 さらに2種類のレクチンのN末端アミノ酸配列25残基およびエンドプロテアーゼ処理によって得られたペプチドのアミノ酸配列を決定した。これらのアミノ酸配列をもとにオリゴヌクレオチドプライマーを合成し、PCR反応を行ったところ、それぞれのレクチンに対応する665bpおよび425bpの遺伝子をクローニングすることができた。
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