本研究では、モルモット回腸平滑筋における電位依存性カルシウムチャネルのムスカリン受容体刺激による持続性抑制効果に、アクチンあるいは微小管細胞骨格を介した制御機構が関与する可能性を検討することを目的とした。電位依存生カルシウムチャネル電流およびカリウムチャネル電流は、回腸縦走筋から得た単離平滑筋細胞からパッチクランプ法により記録した。 アクチンフィラメントの重合を阻害するサイトカラシンBおよび同フィラメントの重合を促進するファロイジンは、カルシウムチャネル電流に対してもムスカリン受容体刺激による同電流の抑制効果に対しても影響を及ぼさなかった。微小管フィラメントの重合を阻害するコルヒチンとビンブラスチンはカルシウムチャネル電流を増大させ、ムスカリン受容体刺激による同電流の抑制効果を消失させた。微小管フィラメントの重合を促進させそして安定化するタクソ-ルはカルシウムチャネル電流を抑制した。カルシウムチャネル電流は、タクソ-ルにより十分抑制された後ではムスカリン受容体を刺激してもさらに抑制されることはなかった。微小管に作用する上述の薬物は電位依存性カリウム電流に対しては影響を及ぼさなかった。これらの結果は、電位依存性カルシウムチャネルの活性が微小管の重合・脱重合により調節を受けること、ムスカリン受容体刺激による持続性の抑制効果に微小管の重合過程が関与していることを示唆する。 以上の成績は第122回日本獣医学会および第70回日本薬理学会年会で発表し、現在論文にまとめ投稿する準備をしている。ムスカリン受容体刺激からカルシウムチャネル活性の抑制に至る過程において、微小管の重合・脱重合がどのように関わっているのかは今後に残された研究課題である。
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