研究概要 |
本研究は,精細胞内でCalnexin-1に結合しているタンパクを同定し,そのcDNAのクローニングを行い,ならびにCalnexin-1との結合調整機構を検討,Calnexin-1の小胞体タンパク輸送への関わりを明らかにすることが目的であった。実験目的を簡単に遂行できる系として、申請書(1)Calnexin-1結合タンパクの分離,および(2)Calnexin-1と結合タンパクとの結合様式の検討を同時に行うため,今回はクロスリンカーは用いず精巣をCa2+EGTA,Mg2+,EDTA存在下で別々にホモジナイズし,2種類の抗Calnexin-1抗体(Polyclonalおよび小胞体内腟domainを認識するMonoclonal抗体)カラムによるAffinity chromatographyにより結合複合体回収状況の比較を行った.その結果,Polyclonal抗体カラムでは,上記4条件すべてにおいてCalnexin-1以外の夾雑タンパクが確認できたが,特にEDTA存在下で他の条件で見られない多くのバンドを確認した.回収されるCalnexin-1複合体の総量もこの条件がもっとも多かった.これに対し,Monoclonal抗体カラムでは,EDTA存在条件でのCalnexin-1回収率は他の条件より低く,また他条件ではCalnexin-1以外の夾雑タンパクはほとんど観察されなかった.このMonoclonal抗体はCalnexin-1の内部Porlin-rich repeat配列を認識し,この部位に小胞体タンパクが結合すると予想される.従って上記の結果は,Mg2+のような2価イオン非存在下で,Calnexin-1は他のタンパクと優位に相互作用する可能性を示している.これは体細胞Calnexinで報告された(Ou et al.,1995J Biol Chem 270:18051)Mg2+による構造変化による機構と類似していると推測された.なお,本学において組み換え技術を行使するには予想に反しあまりにも設備的不十分さがあったため,本年度は周辺機器のセットアップを行うにとどまり、(1)-2)Two-Hybridシステムを用いたCalnexin-1結合タンパクcDNAの検出,(3)結合タンパクcDNAとCalnexin-1 cDNAを培養細胞に導入したモデルの確立,は実験行使に至らなかった。
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